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宮津カトリック教会 聖ヨハネ天主堂
京都府宮津市

●現役の教会堂●民間建築物●1896(明治29)●105歳

 建築年代、様式ともに歴史的財産とするには申し分がなく、自治体や大学の研究室からも注目されている。しかしこの建物に関して最も魅力的なのは、天主堂として現役である点。文化財としてとらえられるのには、まだまだ若いのだ。電話でのインタビューを行った際、信徒とともに自分たちの手で天主堂を維持してきた谷口神父から、建物保存と登録文化財制度について貴重なお話をいただいたので「詳細」部に記載した。

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詳細
所有者の変遷 宮津カトリック教会
設計者、施工者、
その他情報
ルイ・ルラーブ(設計)、大井正司(施工) 
様式、特徴 ・外観/木造平屋建、切妻屋根。現在の西正面の意匠はロマネスク様式にのっとり、中央入り口は三本の側柱と三重のアーキボルトで飾られる。中央上部にはバラ窓をもうけ、その回りをアラベスク彫刻を施した半円アーチで囲む。軒にはロンバルディア帯を巡らす。側面には半円アーチを持った窓を並べ、色ガラスをはめる。軒にはバージ・ボルトを連ねる。
・室内意匠/床は板張りであるが、会衆席は畳敷。壁は漆喰塗で、至聖所のみ腰パネルを巡らす。天井は板張りで、四部交差ボールトをかたどる。
・平面/三廊バシリカ形式をとり、西に正面入り口、ナルテックスを設け、東端に至聖所とアプスを置く。 アプスの低層部は香部屋(祭具室)が囲む。またナルテックスの上部には聖歌隊席を設け、中央入り口脇の螺旋階段より上る。 会衆席は柱列により身廊と両側廊に三分されている。                                 
構造 木造平屋建
建物の使われ方 現役の教会堂として利用されている。前庭を利用してコンサートなどを開いたこともある。
年間利用者 信徒の他に、観光客が年間1万人ほど。
歴史、変遷 現存の木造教会建築としては、大浦天主堂に次いで日本で2番目に古く、現役で使用されているものとしては日本で最も古い。
地域の思い 1896年の献道以来、1927年の丹後震災による破損を経て若干姿を変えたものの、市街地中心部(市役所の隣)に位置し、信徒はもとより多くの市民に見守られてきた。信仰の場として多くの信徒の心の拠り所であり、宮津市街地における重要な観光スポットの一つである。
再生の目的
保存・再生活用
に至る経緯、
地域の意見
手本事例 重要文化財 鶴岡カトリック教会天主堂(山形県鶴岡市、明治36年築)
/同時代の建築で、重要文化財に指定されている例。今後、指定を受ける時のことを考えて、参考にしたい。 
機能・用途の変更
のための
改修操作
部分的な修理を施しながら、外壁の塗り替え、屋根瓦の葺き替えを行っている。外観・内装とも1927年以降は大きな変更は加えられていない。

・昭和2年の丹後大震災で外壁が全部落ちたため、当初漆喰塗りであった壁を、西正面をモルタル塗り、他の3面を下見板張りに変更した。また、南北両側面に並んでいたバットレスも省略された。
・丹後震災以降に、香部屋(祭器具の保存場所、祭具室)を増設。
・震災後にナルテックスを設置。以前は現在のナルテックスの位置に幅一スパンのポーチコを置いて、入り口から直接、会堂内に入る平面であった。
・1960-62年の第2バチカン公会議後、不要になった祭壇の部材を、信者が分割して持ち帰った。教会の100周年を記念して祭壇を復刻したがすべて新材を用いたため、今後各信者が持っている部材を再び集め、もう一度本来の姿を取り戻したい。
・平成11年、香部屋の水周りが腐食したため給排水設備を改修した。
・今年(平成13年)4月、香部屋の雨漏りを修理した。
法規クリアの
ための改修操作
建築の歴史や
記憶を残すために
保存したもの
出来るだけすべての部分を、歴史や記憶を大事して保存してきた。一部、新建材などで、不気味に改修されてしまった部分もある。
改修にあたって
現場で発見した
苦労など
改修当時の
法規との関係
クリア
文化財等の指定 ・文化財に登録すれば、今後の修復に必要な有識者の知識が得られる。一方で、公的にオープンしなければならなくなり、今のように自由に利用できなくなる恐れがある。またその場合、改修費用、受付の人件費など、大掛かりな予算が必要になる。
・他の登録された例を見ると、別に本来使用するためのチャペルを設け、現在の建物は保存されたりしているが、その場合、新しいチャペルと、元の建物二重の管理費用がかかる。補助金が出たとしても、現在よりも負担が大きくなると推測される。
・自分たちの手で、使い勝手が良いようにうまく補修していくのが理想である。
・教育委員会の方から、強く文化財登録を勧められている。本部であるカトリック教徒司教区の司教としても、登録に興味がない。ただ、現状では考えられないが、建物の最良の保存のされ方を考えた時、将来的に登録の道は考えられる。
事業費 随時自己負担による。
補助金
改修後の声/
今後の展望
・ナルテックスのコンクリート床が、外部から内部へ向けて傾斜しているため、入り込んだ雨水が溜まってしまう。なんとかして直したいが、歴史の詰まったコンクリートをどう修理するかが問題。
・会堂内の畳の周りを、新建材を利用して修復してしまったので、元のひのきの姿に戻したい。
・ステンドグラスの上部が湾曲して落ちてきた窓枠のせいで開きにくくなっている。このステンドグラスを利用したまま修復したい。
・窓に使われている色ガラスが、1896年当時、フランスで作られたものであり、現在では入手できなくなっている。
・あくまでも宗教施設であるにもかかわらず、ミサの最中に傍若無人に乱入する観光客があり、頭を悩ませていた。ここ近年は張り紙をして対策している。
・歴史的建造物としての宿命だと考え、一般公開をしているが、観光客と信者の交通整理が大変である。
・現在の神父である谷口さん(現職6年目)は信念を持って保存に力を注いでいるが、後継者に引き継いだ後の保存のされ方が心配である。信徒には口をすっぱくして、管理の方針を指導している。
・今後も今までのような方針を貫いて保存してゆくために、信者を中心に聖堂保存会を立ち上げる構想もある。 
その他
参考資料
           
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